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穏やかな海

PHJ東海支部勉強会

高性能住宅も​夏を旨とすべし。浜松PHを題材に夏の設計ポイントについて学んでいただきます。

​注:公開期限は9/30までとします

01

​エアコンの方式

エアコンと換気システムの関係は、大きく3つの方式に分類できます。理解しやすいように、ここでは【薪釜型】【スーパー銭湯型】【源泉掛け流し型】の3種類に例えます。 【薪釜型】エアコンと還気系統が完全に分離されたタイプです。システムの自由度は高い一方、還気系統からの給気が直接室内に供給されるため、給気口(SA)付近が不快になりやすく、またエアコンはサーモオフしやすい傾向があります。空気を水に置き換えると、「水をためて薪釜でお湯を沸かす」方式に似ています。 【スーパー銭湯型】ダクト接続型エアコンの還気系統に、熱交換器からの給気(SA)を合流させるタイプです。外気が直接エアコンに送られるため、サーモオフしにくく室温が安定しやすいのが特徴です。また、室内循環風量のコントロールもしやすいシステムです。空気を水に置き換えると、大量循環湯量を確保しているスーパー銭湯の浴槽のようなイメージです。 【源泉掛け流し型】ダクト接続型エアコンに、熱交換器からの給気(SA)のみを供給する方式で、いわゆる外気処理エアコンです。室内還気を循環させないため風量を大きくしにくく、風量の制約により暖冷房能力が頭打ちになり、能力不足になることがあります。空気を水に置き換えると、源泉掛け流しの温泉に例えられます。寒い冬にお湯の温度を上げようとしても、湯量と湯温には限界があり、結果的に浴槽サイズが制約される状況に近いといえます。 中部地区では、夏季の冷房負荷は外気処理のみではまかないきれないため、【スーパー銭湯型】が最も合理的な選択と考えられます。

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02

エアコンのカビ対策

パッシブハウスは結露が起きない設計であるため、カビが生えにくい建物と言えますが、エアコン内部においてはそうとも言えません。カビの生える条件について考えて見ましょう。 カビが生える3条件として、温度・湿度・通風(=換気)があります。この中でも通風に注目してください。通風が常にされていれば、カビの胞子やカビの栄養が滞留しなくなります。通風を常に確保することがカビの発生抑制に有効なのです。 エアコンの話に戻りましょう、熱交換器と直結したエアコンシステムの場合、24h換気を止めることはありませんから、必然的にエアコン内部には常に通風が確保された状態になります。このことが重要なのです。壁掛けエアコンでは得られないメリットが熱交換器直結形エアコンにはあるのです。

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03

外付けシェード・ブラインドの効果

HamamatsuPHにおける外付けシェード・ブラインドの効果を以下の条件で検証しました。 【条件】 •2階:南面に幅16515のサッシを3本設置。庇(約450mm)+外付けブラインドを併用。 •1階:南面に幅25622のサッシを2本設置。庇(約1000mm)+外付けシェードを併用。 【比較内容】 外付けシェード・ブラインドを設置した場合と、まったく設置していない場合の年間エネルギー消費量を比較。 【結果】 シェード・ブラインドを設置することで、年間の電気代にして約 7,000円 の削減効果が確認されました。 【補足】 シェードはその色によって日射遮蔽効果が変わります。例えばブラウン色は日射遮蔽効果が高く、オレンジは効果が低くなります。浜松PHでシェードの色をブラウンとオレンジで比較すると2%くらい冷房除湿負荷が変わります。金額に直すと年間で500円くらい。1Fの庇の付いた窓のシェードでさえ無視できない影響があります。

04

OAとEAの長さ断熱厚の効果

外気から熱交換器までのダクトには OA(外気導入) と EA(排気) があります。 このダクト内の空気は外気に近いため、ダクト自体が外皮として熱損失に影響します。 なお、パッシブハウス基準では OA と EA は3m以上離すか、異なる面に設置することが求められます。 しかし、このOA・EAダクトの長さや断熱厚みが熱交換効率に与える影響は、あまり知られていません。 そこで、HamamatsuPHをベースにシミュレーションを行いました。 ⸻ 【条件】 •OAダクト:長さ3m、断熱厚50mm •EAダクト:長さ3m、断熱厚50mm •熱交換器:SE200RS ⸻ 【比較内容:】 •OA・EAともにダクト長を2倍に延長 •断熱厚を50mm → 25mmに減少 ⸻ 【結果】 •暖房需要:6.4%増加 •冷房・除湿需要:ほぼ変化なし •電気代換算:年間約1,000円の増加 •有効熱交換効率:約8%低下 ⸻ この結果から、OA・EAダクトの長さや断熱仕様は熱交換効率に無視できない影響を与えることが分かります。設計段階でダクトルートや断熱仕様を適切に検討することで、暖房負荷やランニングコストを抑えられます。

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05

換気風量の影響

近年、ダクト式換気を採用した住宅では、竣工時に風量測定を行うことが一般的になっています。パッシブハウスにおいても、設計値に対して誤差10%以内での風量測定が求められます。 HamamatsuPHでも風量測定を実施した結果、平均換気風量は92 m³/hでした。 これは24時間換気としてはやや少なめですが、パッシブハウスの基準である 0.3回/h を満たしています。 ⸻ 【風量設定の考え方】 換気風量の設定指標としては、 •24時間換気基準(0.5回/h) •パッシブハウス基準(0.3回/h) などが用いられますが、CO₂濃度を基準に考える方法も有効です。 目安としては 30 m³/h × 人数。 5人家族の場合は 150 m³/h が適切な風量となります。 ⸻ シミュレーション比較 条件 •平均換気風量:92 m³/h 比較内容 •換気風量を 92 → 150 m³/h に変更 結果 •暖房需要:17%増加 •冷房・除湿需要:ほぼ変化なし •電気代換算:14,612円 → 17,086円(年間約2,500円の増加) •有効熱交換効率:約1.8%低下 ⸻ 考察 換気風量を増やすと、室内外の空気交換が増える分、暖房需要が増大します。冷房・除湿への影響は小さいものの、ランニングコストは年間約2,500円上昇します。 必要換気量とエネルギー消費のバランスを考え、過剰換気とならない風量設定を心がけることが重要です。

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06

床下の除湿について

コンクリートスラブの放湿とリスク コンクリートスラブは打設後、時間の経過とともに内部の水分を放出します。 スラブ厚150mmの場合、次のようなペースで乾燥が進みます。 •1年目:約5 kg/m²を放湿(累積の約40〜45%) •3年目:累積で約70〜80% •6年目頃:ほぼ平衡状態に到達 床面積60m²の基礎なら、年間約300kg(1時間あたり約34g)の水分が放出されます。 換気量が100 m³/hであれば、空気1m³あたりの水分負荷は約0.34g(乾燥空気基準で約0.28g/kg)に相当します。 ⸻ 換気がない場合の危険性 換気や空気の移動がないと、1日あたり約816gの水蒸気が床下に溜まります。 床下空間が20 m³の場合、1日で約40g/m³の水蒸気が供給されます。 これは20℃での飽和水蒸気量(約17g/m³)を大幅に超えるため、短時間で結露が発生します。 結果として、 •水滴の発生 •カビ・腐食 •木部や断熱材の含水率上昇 といったリスクが高まります。特に打設後1年目は危険です。 ⸻ 有効な対策 •十分な床ガラリを設置し、室内空気を床下へ常時通気 •床下RAを設ける たとえば、30 m³/hの連続通風でも床下の絶対湿度上昇は概ね1 g/kg(DA)に抑えられ、結露リスクが大幅に低減されます。 ⸻ 注意点 床ガラリだけでは自然拡散に頼ることになり、放湿に追いつかない可能性があります。 条件によっては有効開口面積が1 m²以上必要になることもあり、現実的ではありません。 床下にRAを設け、30 m³/h以上の機械換気を確保する設計を基本としてください。

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